<1. 管楽器は難しい?>

 管楽器は難しいとか、自分が吹けないから指導できないという声を今でも聞くことがあります。ではリコーダー(リコーダーも管楽器ですけど)なら指導できるのか、合唱ならうまくいくのかと考えてみてください。
 小学生にとって、管楽器で音を出すことはそんなに難しくはないようです。少なくとも大人になってから始めるよりはずっと抵抗なく入っていけます。
 それでも偶然うまく吹けるようになることを期待しないで、順を追って指導することが必要です。

 どの管楽器でもまず息や口の形(アンブシュア)の最低限の説明をします。

 金管楽器ではアンブシュアの説明をしてからマウスピースを渡すとほとんどの生徒がすぐにバズィングすることができますし、そこに楽器をつけるともちろん音は出ます。
 どの金管楽器でも唇と息のコントロールだけでいくつかの音が出せます。初めて楽器を吹いた子供でも2〜3の音(倍音)を出せる場合もあります。しばらく練習すると出せる音の数はさらに増えます。
   小学校に金管バンドが増え始めた1980年代、多くの学校で生徒の前でピカピカの金管楽器をケースから出して吹き方を説明し、その時初めて楽器を持った生徒に実際に音を出してもらう機会が何度もありました。
 トランペットだけだったり、コルネットからチューバまで揃っていたりと学校によって条件は様々でしたが、ほんの5分か10分楽器を持っただけでみんな楽しそうに音を出していたと思います。それを見て担当の先生方はすべての問題が解決したように安心しているようでした。
 でもそれですぐに合奏できるわけではありません。そこから先が大変なのです。
 金管楽器の場合、同じ指でいくつかの音が出るので、今出ている音が何の音なのか、音と楽譜との関係がわからないと合奏には使えません。
 これは楽器を吹く技術そのものよりも音感の問題で、小さい頃からピアノなどを弾いている生徒は金管楽器を始めても短期間に上達することが多いようです。
 楽器の練習で音感を育てるようなリップスラーアルペジオ(分散和音)、インターヴァル三度の音階等を多く取り入れていくと、楽譜と音の関係をより短い時間に身に付けることができます。

 木管楽器はアンブシュアの説明をして、クラリネットやサックスならマウスピースとリードで、オーボエやファゴットならリードだけでまず生徒に音を出させてみます。これはそれぞれの楽器を鳴らすための息と口の感じを覚えるという程度で、それ以上に時間をかけても意味はありません。
 フルートは頭部管だけでいくつかの倍音が出ますから、息の角度を変えて試してみてください。この練習に時間をかけたほうがいいというフルートの専門家もいるようですが、ほとんど必要がないと言う人もいます。小学生に興味を持ち続けさせるためには音さえ出れば早く楽器をつけた方がいいと思います。
 どの木管楽器も、マウスピースやリードで音が出れば、楽器をつけて指を覚えると(音色はともかく)その運指通りの音が出るので初心者でも早い時期に曲を吹くことができます。
 問題は多くの場合、調整の悪い楽器や楽器(マウスピース)に合っていないリードにあるようです。
 また小学生にとってはフルートやクラリネットもかなり大きく、長く、重く、指が届きにくいこともあります。肉体的に無理がないかどうかにも注意が必要です。

 どの楽器でも音色の善し悪しは吹き方の問題だけではありません。演奏を聴いたことがあるかどうか、いい音色を知っているかどうかにも左右されます。生演奏を聴くのが一番ですが、録音された演奏でもとても参考になります。
 もしバンド指導で何かうまくいかないと感じたら、どこに問題があるのかをよく考えてください。原因がはっきりすれば改善策もきっと見つかります。
 多くの場合、その原因は管楽器あるいは打楽器の難しさから来るものではないと思います。

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