<バズィング>
バズィングというのは金管楽器の練習方法の一つですが、一部で重要視され過ぎているか誤解されているような気がします。どんな練習方法でもやり方と練習量、練習時期が正しくないと効果は上がりません。
バズィングというのはバズ(buzz)、つまり蜂等が飛ぶ時の羽音のようなブーンという音を、唇だけかマウスピースを使って出すことです。金管楽器の音はトランペットでもチューバでもみんなこの音(振動)が元になっています。
上下の唇を閉じて(これがポイントです)、その中央のすき間から細く息を出します。この時、下唇を外側に突き出さないようにします。前から見ると下唇は横一線に見えているくらいで、あとの部分は上唇に隠れています(ただしクラリネットのように内側に巻き込むのではありません)。
バズィングの初めは「スイカのタネを飛ばす時の様に」プッと瞬間に息を出すほうが、感じを掴みやすいかもしれません。最初はブルブルと唇が震えるような低い音から始めるといいでしょう。その後、唇の真ん中のごく小さな部分だけを振動させるようにします。
初めから音を長く伸ばそうとするより、メトロノームに合わせて、こういうリズムで練習するとアンブシュアと息のタイミングを合わせる練習になります。
一瞬でも音が出るようになったらそれを少しずつ長く延ばせるように何度か繰り返し、その間に唇の中央の開き(アパチュアといいます)の大きさ(開きのまわりの唇の緊張)をほんの少し変えることで音程を変えられることも説明します。
マウスピースだけのバズィングでも各楽器のパート譜やメロディを吹くことが出来ますが、この段階でバズィングだけを長い時間(特に大きな音で)練習することは意味がないばかりか、かえって口や体に力が入る悪い癖を付けることがあるので気をつけてください。
「バズィングばかり練習していると、楽器を付けてもバズィングの音になる」と話していたチューバ奏者もいました。
マウスピースだけでバズィングをしている時と楽器を付けて吹いている時とは息にかかる抵抗が全く違い、楽器を付けた方がずっと簡単に音が出ます。楽器を付けない状態ではかなり息に力を入れるか、唇の開きを無理をして小さくすることになりがちです。そのため、マウスピースでバズィングをする時はマウスピースの先端を指で一部塞いで、息に抵抗を付けるようにしている人もいます。またマウスピースの先を一部塞いだ状態で、普通に楽器を吹く時と同じような位置にセットする道具もあります。
マウスピースのシャンクに適当な太さのホーズを10〜20センチに切って付けると練習しやすくなる場合もあります。
楽器を吹き始めたばかりの生徒にとっては唇が震えて音が出るという感覚さえ掴めたら、楽器を付けて音を出して練習する方が、ずっと楽しくて効果的だと思います。
初めて楽器を付けて音を出す前に、まず楽器で出るはずの音程(トランペット等のB♭の楽器ならFかB♭)をピアノ等で生徒に聞かせて、音程の目標を持たせてから吹かせて下さい。
楽器で普通に音が出るようになってから(きっと何週間か練習したあとで)、より楽に吹けるように目的を持ってバズィングすることはよくあり、その頃にはもう生徒の頭の中に、ある程度音色のイメージがあるので息やアンブシュアを自分でコントロールできるようになっているはずです。
ある音楽学校の学生が高校時代までに身に付いた、癖のあるアンブシュアを矯正するために、レッスンの度にバズィングをチェックされていたというような話も聞いた事があります。
合奏中でも各パートの一人だけに楽器で普通に吹かせて、他の生徒にはその音に合わせてバズィングさせるというような練習も出来ます。
でも、練習を始めたばかりの生徒は一日の初めにほんの何回か、数秒ずつ程度バズィングするくらいにして、あとは普通に楽器で音を出す練習をすべきだと思います。
吹奏楽の練習時間に金管のバズィングと同じように、クラリネットやサックスのマウスピースにリードを付けて鳴らす練習をしているのを見かけますが、これは金管のバズィングとは全く違い、ほとんど意味のない事です。