<10. 読譜のために>

 楽器の指導ということに意識が集まり、講習会でも吹き方、叩き方ばかりを問題にすることが多いようです。でも、楽譜が読めるように指導できるかどうかが、楽にバンドを運営できるかどうかの大きなポイントで、その点だけでもその指導者のバンドに対する考え方と指導力がはっきりわかります。
 一年を通して考えると、楽器の演奏のレベルより読譜力のレベルの方が、バンドの運営にとっては大きな問題になります。
 簡単な曲でも演奏できるようになるまでに何ヶ月もかかるという学校がありますが、冷静に考えるとそれは曲を練習するのに時間がかかっているのではなくて、楽譜を読むのに(あるいは楽譜が読めないから)時間がかかっているのです。
 以前は中学や高校でもあまり楽譜が読めなくて、コンクール等で演奏する曲ばかりを時間をかけて練習しているバンドがありましたが、この頃は定期演奏会等を開く学校が増え、一時期に沢山の曲を練習するのが普通になってきました。
 指導している先生の中にも楽譜をスラスラとは読めない人も多いようで、だから生徒に読譜を指導できない、指導しても読めないと考えてしまうのかもしれません。
 でも、もし先生が読めなくても、小学生は楽譜を読めるようになります。楽器の練習と同じように楽譜を読む練習にも時間をかけて下さい。
 小学生でも音感が良くて、楽譜を見てすぐにその音が頭に浮かび、正確に声に出して歌える子もいます。そういう生徒の多くはピアノなどを小さい頃から練習しているようですが、全くそういう経験がなくても耳のいい生徒はいます。
 先生方の中にも小さい頃から耳が良くて楽譜の読み方などで困ったことがない方もいらっしゃると思います。
 まず、一人一人の生徒の音感や楽譜が読めるかどうかをチェックして、それぞれに合わせて必要な指導をしてください。
 バンドを指導する立場から見ても、楽譜を配って、ある程度個人練習・パート練習の時間を作れば、後は指揮をするだけで曲ができるようになるというのがどれだけ楽かを考えてみて下さい。

 読譜力をつけるために五つのポイントを挙げてみます。

楽譜の基本的な仕組みや決まりを教える。
リズムはパターンで覚える。
楽譜には音名、運指、ポジション等を書かせない。
基本練習、音階等も毎回楽譜を見て練習する。
簡単な曲から読む練習をする。

 以上のような点に注意して練習すれば必ず読譜力がついてきます。
 言葉を覚えるのと同じで、必要に迫られれば年齢に関係なく楽譜を読めるようになりますし、大人よりも小学生の方が簡単に読めるようになるようです。
 また、「あいうえお」を覚えても実際に多くの文章に当たらなければスラスラと読めるようにならないのと同じように、楽譜の読み方がわかっても、実際に多くの楽譜を読んでみないと読譜力は身に付きません。
 読む練習として簡単な曲をたくさん音にしてみましょう。本番で演奏する曲だけを練習するのではなく、練習の初めに毎回簡単なコラールなどを、一部分でも(最初の音一つでも)初見で吹くようにすると、楽譜を見て吹くのが当たり前になってきます。
 1年に数曲しか楽譜を見なければ読譜力はなかなか身に付きません。

 金管バンドの初見練習のために「金管バンドのための編曲集」を書いてみました。どれも1〜2分の曲ですから毎回の練習で使ってください。
 1曲、2曲ではなく、10曲、20曲と次々練習すれば楽譜を読む必要性が生徒にもわかると思います。ほとんどの曲をスコア1ページに書きましたから、ダウンロードしてコピーすればスコアのまま演奏できます。「猫踏んじゃった」はピアノで弾くのと同じ調で書きましたが、知っている曲なので案外簡単に演奏できたというメールももらっています。

 楽譜を読んで演奏しているバンドとただ覚えたままに演奏しているバンドとは、仮に本番で同じような演奏ができたとしても生徒一人一人の感じるもの、得るものは大きく違うはずです。
 1年、2年と時間をかけて、結局、何曲かを覚えたのがすべてといった、後に何も残らない虚しい練習は一日も早く止めて欲しいものです。
 楽器を吹く力と楽譜を読む力がバランスよく身に付いて初めて音楽的な合奏ができ、小学校を卒業した後も生徒一人一人が楽器を楽しむきっかけを作ることができます。

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