<12. チューニング>
管楽器の場合は、息とアンブシュアがある程度安定して、いつも一定した音が出るようになるまではチューニングをしても意味がありません。ですから、まず響きのある音を作るための基本練習に時間をかけてください。
時々、ひどく息の混ざったシューシュー(ザーザーかな?)という感じの音色で生徒がチューニングしていることがあります。木管楽器でも金管楽器でも、まずそういう音色を改善しないと合奏には使えません。
そういう音色でもチューナーは反応して、高いとか低いとか示すようですけど、全く無駄な時間だと思います。
楽器をある程度鳴らせるようになって楽器の状態が悪くなければ、どの楽器も(音域にもよりますが)あまり気にならない程度には音程が合うはずです。
つまり、響きのある音を鳴らせる生徒が集まっていれば、チューニングに時間をかけなくても音は合うし、まだ楽器を十分に鳴らすことができない生徒の集まりならいくらチューニングに時間をかけても合わないということになります。
極端な事を言えば、練習前に音程を合わせても合わせなくても、それぞれのメンバーの合わそうとする意識と耳のレベルまでは合うしそれ以上には合わないのですから、チューニングに時間をかけ過ぎるのは無駄です。
まず二人の生徒に同じ音を吹かせて、2つの音程が合っているのか合っていないのかを判断させたり、音程が合っていない時に出る「音のうなり」を聞かせ、合っていない状態を教えることから始めましょう。
すぐに合わせられなくても、耳で聞いて合っていない事がわかる、合っていないのが気になるという事が大切な第一歩です。
隣同士に座っている二人の生徒に半音違いの音を吹かせて「二人の音が違うのわかる?」と聞いてみると実は全然わかってなかったということもありました。「合う」「合わない」という言葉の意味がわかっていない生徒もたくさんいると思います。
生徒だけではありません。ずいぶん前に聞いたのですが、ある人が指導に行ったある学校で、同じパート譜を見てトランペット(楽譜より一音低い音がでる)とリコーダー(楽譜のままの音が出る)の生徒が一緒に演奏していたことがあったそうです。その曲はその学校の校歌で、何年もの間そういう状態で一音違いのメロディが同時に鳴っていたのに誰も気がつかなかった(気にしてなかった)らしいのです。
レベルの高いグループでは、何かのハーモニーを鳴らした時に、音を出した瞬間は合ってなくても、メンバーそれぞれが聞き合って次の瞬間にはバランスや音程が良くなるということがあります。逆にメンバー一人一人が音程とかバランスを全く気にしてないグループでは、間違った音を吹いてもそのまま鳴らし続けています。
チューニングというと音が高い時は管(チューニング管)を抜いて、低い時はチューニング管を入れればいいと思いがちですが、それですべてが解決するわけではありません。
どの管楽器でも、音程が高くてチューニング管が外れるぎりぎりまで抜いていたり、チューニング管を全部入れているのに音程が上がりきらないということがあります。こういう場合はきっとアンブシュアか息か楽器に問題があるのだと思ってください。
多くの学校で見かけますが、チューナーを見ながら音程を合わせるのはやめましょう。自分の耳で判断できなければ一時的に合っても意味がありませんし、音色を気にせず針が真ん中に来ることだけに注意して、アンブシュアを悪くすることもあります。
なぜ音程が合わないのか、今自分のバンドの生徒はどの段階かを、まず冷静に見極めて下さい。
各楽器で音程が合わない場合の原因を考えてみます。
木管
金管
打楽器
温度によっても楽器の音程はかなり変化しますから、エアコンの無い練習室で一年中同じピッチにチューニングをすることは無理があります。夏の暑い日に、楽器のチューニング管をぎりぎりまで抜いてピッチを合わせたりすると、どの楽器でもチューニングした音とそれ以外の音とのバランスがとれなくなります。
暑い時はバンド全体のピッチが高めに、寒い時は低めになってもいいと思います。
<12. チューニング>