<クラリネットの課題>
吹奏楽の音の母体となるのがクラリネットセクションでしょう。このパートの音色がバンド全体の音を左右します。楽器をよく鳴らした厚みのある音を作って下さい。
まずへ長調の運指を覚えて音階を上から下へ練習を始めましょう。
上下に動けるようになったら滑らかな音階のイメージをよく覚えるまで繰り返して下さい。
低いオクターブのハ長調の音階は合奏の最初によく練習していますが、クラリネットにとっては案外難しいものです。
全部の指を押さえるシの音から左手の人さし指以外の指を全部放して右手の親指だけで楽器を支えているラの音に滑らかに移るのが難しく、注意して吹かないとそこで音が途切れます。
まず、ミ-ラをスラーで繰り返して、左手の人さし指の動きを覚えてください。Aキーを押さえる左手人さし指の動きが最小になるようにしましょう。それが出来るようになったらレ-ラ、ド-ラも同じように練習して下さい。
ド-ラまでスラーで滑らかに吹けるようになったら、次に小指を使わない上のレからラのスラーを練習し、その後小指を使う上のドからラを練習します。そういう準備練習をしてから最後にシ-ラを練習しましょう。
下の譜例のようにシの音を長く延ばしている間にラの音を挟むという感じで全体をスラーで練習して下さい。
右手小指でシを押さえ、右手はずっと押さえたままで練習して下さい。
上のような練習を順に積み重ねるとハ長調の音階が滑らかに吹けるようになりますが、まずへ長調の音階で滑らかな音のつながりのイメージを持っていることが大切です。
クラリネットを右手の親指だけで支えるのは小学生でなくてもかなり大変です。そのために右腕全体に力が入り、他のいろいろなフレーズの指の動きにも影響することがあります。
もしベルの下に適当な高さの台を置いて楽器の重さを支えることが出来れば無理なく指の動きを覚えることが出来ます。そのための市販のスタンドもありストラップを使っている人もいますが、何か代わりになるものを探して試してみてはどうでしょうか。
高音域で悲鳴の様な音になるクラリネットパートをよく聞きます。無理に大きな音量を出そうとすることやアンブシュアが緊張しすぎるのが原因のようです。
上の楽譜の下の音を吹いてレジスターキーを押さえて上の音に移る練習は余計な緊張感を持たずに高音を吹く練習になります。
でも合奏で吹く前にまず高い音域で静かなメロディを吹いて、優しい音色を知る(覚える)ことが一番大切だと思います。
次の二つのポイントも多くの学校で気になりました。
下の三つの音(上下の音はレジスターキー以外は同じ運指です)はそれぞれ左右のどちらの小指でも押さえることが出来ますが、片方しか覚えていないと音階やレガートのフレーズがスムースに吹けないこともあります。
この音も前後の音によっていくつかの指使いを使い分けますが、最初に覚えた一種類の運指だけで何でも吹こうとして無理をしている生徒をよく見かけます。
下の三つの場合の使い分けを参考にしてください。
A 前の音で左手薬指を使ってない『レからミb』『ラからシb』のような時は左手薬指。
B 前の音で左手薬指を使っている音からは下の図の右端のサイドキーを使います。
C 右手の人差し指を抑えている音からはその指を残したまま。
初級バンドのクラリネットの運指上の問題は次の二つ(上下の音はレジスターキー以外は同じ運指)の音に関係していることが多いようです。
この音を出すためのキーは右手の小指で押さえます。(左手にもこのためのキーがあるクラリネットもありますが一般的ではありません)。
この音は左手小指のキーを押さえます。
この二つの音には替え指がないので、前後に小指のキーを押さえる音がある場合にそれぞれ反対側の小指を使うという簡単なルールを覚えていれば多くの問題は解決します。
左右の小指をそれぞれのキーからキーへ滑らせるという場合もありますが内側のキーから外側にしか滑らせることは出来ないし、動きが不確実になりやすいのでまず左右の小指を交互に使うように指導して下さい。
どれもいくつかの調の音階とアルペジオ(分散和音)を練習すれば、前後の音によってどの指を使うかがわかってきます。こういう点でも音階とアルペジオの練習は大切です。
他に、こういう音の動きの場合(上下の音はレジスターキー以外は同じ運指)、普通の運指では右手の人さし指を離すのと同時に中指を押さえる(またはその逆)ことになります。
その代わりに人さし指を押さえたまま、左の図で赤で示しているキーを右手の薬指で押さえてシやファ#を出せばトリルも楽にできます。
このキーはフランスでは数字の「5」、アメリカではEキーとかKキーとか呼ばれているようです。
またこのF-F#-Gの半音階やF-F#のトリルでは、左手の親指を押さえたまま、右手人さし指でサイドキーの下二つを同時に押さえてF#を吹くと運指が楽になります。