<トランペットの課題>
吹奏楽でもブラスバンドでもトランペット(コルネット)はメロディラインを吹くことが多く大切なパートです。高い音まで吹けるかどうかは個人の適性に拠る部分も多いようですが、練習の過程でいくつかのポイントがあります。
まずバズィングの練習の後、初めて楽器を付けた時に、中央のドかソから吹き始めるようにしましょう。
今もこの中央のドを高いドと呼ぶ先生がいますが、それではこの音が一番高いような印象を生徒に与えてしまいます。
私はやっと音が出始めた生徒にトランペットはピストンを押さえなくてもこのくらいの音が出るよ、と黒板に左のような音譜を書いて説明します。実際に出る音は違いますが楽譜の上ではアルトホルンも同じ音が出ます。
生徒に興味を持たせるためにちょっと大げさに話すんですけど、これまでに3年生の3学期でまだ正式にはクラブに入っていない女の子が高いドまで音階を聞かせてくれたこともありますし、4年生の女の子が4月から吹き始めて、3カ月程たった夏休み前にきれいなアンブシュアで一番高いソまで吹くのを聞いたこともあります。
低いドしか鳴らない生徒にはもう一度バズィングの練習をさせて下さい。
低いドの音を力任せに大きくブーブー吹いている時間が長いと口を開いて、唇の内側で吹く癖が付いて、高い音を出すのが難しくなってしまう生徒がいます。
トランペットの全音域を考えれば低いミからオクターブ上のミまでを中心と考えた方がいいと思います。
ですから、出来れば低いドを吹く前に、上のミを吹く練習をしましょう。
上のミが吹けるようになってから低いドを静かに練習した方が、いい形の口「アンブシュア」を覚えやすいと思います。
合奏では他の楽器と合わせるために、どうしてもトランペットのハ長調(実音は変ロ長調)の音階から始める事が多いのですが、トランペットのためには変ホ長調の音階を中心に練習した方がいいでしょう。
ド-ソ-ド-ミが出せるようになった生徒には曲の練習の前に、まずスラーで下降形の音階を練習させて下さい。
この時も低いドの音は、大きく吹きすぎると上の音域が出にくくなってしまうことがあるので、無理のない小さな音量で吹かせてください。
静かにゆっくり練習して、出来るようになったらメトロノームに合わせてドンドン早くしていきます。ドンドン早くすることで生徒がより楽しんで練習するようです。スラーなら四分音符140〜160くらいまでは吹けると思います。数日でもっと速いテンポまで吹けるようになる子もいます。
曲の練習でも、新入部員に一番低いパートばかりを吹かせていると上の音を吹くのがよけいに難しくなってしまいます。高い音のパートは高学年と決めないで、吹けるなら新入部員にも少しでも高いパートを経験させましょう。
また曲やパートに関係なく一日に一度はそれぞれの生徒が出せる一番高い音も出してみるように指導しましょう。
低い音をきれいな音色で丁寧に吹くというのも金管楽器では難しいことです。上手に吹ける生徒から上のパートという考えは止めましょう。
少しでも広い音域を練習するということは金管楽器に共通の課題ですが、トランペットには特に注意が必要です。
トランペットで高い音が鳴らなくても、他の金管楽器なら十分上まで吹けることがよくあります。
下の楽譜の左の音をトランペットで吹くのと同じような息、アンブシュアで、アルトなら真ん中の音、トロンボーンやユーフォニアムなら右の音が吹けます。
実際にはそれぞれの楽器ごとにマウスピースや管の太さが違うので少し感じは変わりますが、高い音はトランペットが一番大変だということは覚えておいて下さい。
練習を始めてからかなりの時間(数カ月)が経っても中央のドから上が出にくい(苦しい)ようなら他の楽器を試してみた方が、生徒のためにもいいと思います。