<19. 広い視野を持とう>
一つのバンドだけを指導しているとその音に慣れてしまい、演奏や音に対する客観的な判断が難しくなるようです。ドラムのヘッドが古くなって音色がぼやけていても気がつかないのはそのせいでしょう。
生徒一人一人のできることできないことがわかってしまうと、気になることがあってもあきらめてしまったりします。といっても他のバンドを聞く機会は年に何度もないでしょうし、他のバンドを指揮する機会はもっと少ないと思います。
そういう状況の中で、広い視野を持つのは難しいものですが、いろいろな音楽を聞く機会は作ることができます。
吹奏楽を指導するから吹奏楽の演奏ばかりとかブラスバンドだからブラスバンドばかりでは音楽的にも偏ってしまいます。
中高の吹奏楽を指導している先生の中にも、今練習している曲の参考に、何年か前のコンクールで金賞をとったどこかの中学校や高校の演奏ばかりを聞いているという方がいましたが、もっと他に聞くべきものがあるような気がします。
ピアノやオーケストラや歌も聴きましょう。いろんな演奏と比較することで自分のバンドの問題がよりはっきり見えてきます。
バンドでは全体に大音量で、静かな部分のない演奏を聴くことが多いのですが、弦楽合奏やピアノ等を聴くと弱音の美しさに改めて気づくことがあります。
また、同じ練習時間を少しでも効果的に使うために常に新しい指導法や練習のアイデアにも関心を持ちましょう。
中学校のバンドでも感じることですが、生徒は一年目に上の学年から教えられた練習方法をそのまま下の学年に保守的に伝えようとします。
もうだいぶ前になりますが、出来て2年目の新設中学校の吹奏楽部に指導に行った時、練習方法を紹介すると2年目の生徒たちは「去年はすぐに楽器を持たせてもらえなかったのに」とブツブツ。前の年は何週間も楽器を持たせてもらえず、マウスピースだけの練習が長く続いたのに、私がその年の新入生にすぐ楽器を吹かせたのが不満だったようです。
指導者が常により良い方法を模索し、新しい練習を取り入れようとする姿勢を見せていないと、たった一年の経験で得たことをすべてのように考え、閉鎖的になってしまいます。それは生徒にとってもマイナスですし、練習方法や練習内容を常に改善しようとしていなければバンドのレベルも変わりません。
他の学校の先生とも何でも話し合いましょう。いろいろと意見を交換することで気づかなかった練習のヒントが見つかるかもしれません。
他の人に指揮をしてもらって、客観的に演奏を聴くことで思わぬ発見をすることがあります。
今の方法しかないと思ったらもう進歩はありません。これ以上進歩しなくてもいいと思えるバンドはあまりないでしょう。
<19. 広い視野を持とう>