<5. 生徒は楽器が好きですか?>

 バンドに入っている生徒は楽器が好きですか?
 バンドに入っている生徒は音楽が好きですか?
 私は以前からこのことに疑問を持っています。
 野球を練習している生徒はテレビでもプロ野球を見ていると思います。イチローがメジャーリーグに移籍した頃(もう20年近く前になりましたが)、アメリカの子供たちがイチローの打ち方を真似して打席に立っている姿をテレビで見ました。今は大谷選手でしょうか。友達同士の話の中にも野球選手の話が出ているんでしょう。でもいろんな学校で(中学校でも)聞いてみたんですけど、テレビで(もちろん生でも)オーケストラの演奏を聞いた(見た)ことがあるというバンドの生徒はとても少ないようでした。
 バンドとオーケストラは違うと思っているからでしょうか?

 バンドに入っている生徒は楽器に興味がありますか?
 最近聞いたのですが、ドイツの幼児のためのフルート教本の最初には生徒が自分でフルートの絵を描くために白紙のページがあるそうです。絵を描くためにフルートを細かく注意して見ることでフルートに対する興味が増す、というのがそのページの目的だそうです。
 生徒は自分の吹いているマウスピースに番号や英文字が入っているということに気が付いていますか? ドラムのスティック(バチ)にも型番があります。何の番号? 番号が違うのはどこが違う? なぜ違う?
 そういうところからマウスピースやスティックに対する興味も生まれ、大切にする、よく練習するということもあるかもしれません。
 そういう話を生徒にしたことがありますか?
 木管楽器では触ったことのないキーもあるでしょう。何でこんなキー付いてるのかな? これも興味を持つきっかけにならないでしょうか?

 楽器のカタログを生徒に見せたことがありますか?
 例えばトランペットのカタログにはいろいろなトランペットの写真が出ています。
普段学校で使っているのはBbのトランペット(左上)ですがカタログには長さ(調)の違うものも出ているでしょう。ロータリートランペットの写真(左下)が出ているものもあります。
 フルートのカタログには銀色だけでなく金色のもリングキーのもあります。
 打楽器のカタログにはスネアドラムだけでもいろいろな種類のものが出ていますし、スティックにも先の形が違うものや長さ太さの違うものがあります。

スティックの先の形

 ホルンやチューバは管の巻き方もいろいろです。
 クラリネットのカタログにはアルトやバスの写真も出ています。Bb管のクラリネットしか見たことがないない生徒には刺激になるでしょう。

 そういうものを見せることで楽器に対する興味が湧くのではないでしょうか。

 中学生や高校生でも自分が練習している楽器の有名な奏者を知らない、演奏も聴いたことがない、その楽器のための名曲も知らないということが多いようです。
 多くの学校で聞いてみたんですが、例えば中学3年間や中高6年間、バンドでクラリネットを練習していたのに、モーツアルトの協奏曲もベニーグットマンも知らない生徒がかなり多いのです。何年もの間、吹奏楽のパート譜だけを吹いていたんでしょう。これではせっかく長い時間をかけて練習しても、クラリネットのごく一部分、あるいは一つの面しか楽しんでないことになりませんか?
 他の楽器でも同じだと思います。
 先生が少しきっかけを与えれば楽器、曲、演奏に対する興味が子供の中でどんどん育ってくるかもしれません。いろいろ聞いたり練習したりしたけど吹奏楽以外は面白くないと本人が考えるなら仕方がないですけど、生徒を吹奏楽の中にだけ閉じこめないように心がけて指導する必要があると思います。

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