<3. いいバンドを作るために>

 普通に楽譜が読めて普通に楽器を演奏できる生徒が集まれば「いいバンド(普通のバンド)」ができます。そういう生徒を育てるという目的を持って指導すれば必ず「いいバンド」が出来ます。
 でも慣れない先生は一日も早くバンドに「曲」を演奏させて自分自身が安心したいという気持ちだけで、この「ごく当たり前のステップ」を飛び越えようとして失敗してしまいます。この失敗を毎年繰り返している先生もいるようです。
 練習時間にはあまり差がないのに毎年バンドのレベルに大きな差がついてしまうのは、この「当たり前の手順」通りに練習しているかどうかに拠ります。
 まず文字を教えてから文章を読ませるというのが「当たり前の手順」でしょう。楽器の練習も同じです。
 20〜30人、或いはそれ以上の楽譜の読めない生徒一人一人に先生が口移しで曲のそれぞれのパートを教える(覚え込ませる)ということは考えただけでも大変ですし、生徒にとっても得るものの少ない無駄な練習時間になるでしょう。
 まず楽器で音が出せるようになって、楽譜が読めるようになってから曲を練習し合奏に参加するというのが「当たり前の手順」で、これを無視してはいいバンドは育ちません。
 まず楽譜を読む演習をして、読めるレベルの楽譜に従って楽器の練習を進めて行くのが小学校のバンドでは特に大切だと思います。

 どの学校でも先生が指導できない時があります。そんな時に生徒がきちんと練習しているかどうかも後で大きな差になります。
 練習の内容、順序が決まっていれば生徒だけでも練習できます。全体のリーダー、各パートのリーダーを決め、曲のパート練習なども先生の指示さえあれば生徒だけでできるように普段から習慣づけておくと効果的な練習ができます。
 まず一日にどんなことを練習するかを決めておき、基本練習等はパターン化しておきます。この基本練習の音階などで音(指)を間違えたまま練習している学校をよく見かけます。各年度の最初に音をよく確認しておかないと一年間間違いを何度も繰り返すことになりますから注意してください。

 演奏の印象は最初の音が鳴った瞬間にほとんど決まってしまいます。つまりメンバー一人一人の音色と全体の響きが良くないといいバンドとはいえません。そのために特に学年の前半は練習時間の半分以上を音作り(基本練習)に使ってください。

 音を出すこととは直接関係はありませんが、練習前後のいろいろな準備や片づけもできるだけ生徒だけでできるように指導しましょう。
 机を片づけてイスを並べたり打楽器をセッティングすること等、特に学年の初め頃は先生がする方がはるかに早くできるので待ち切れなくなってしまうかもしれませんが、それを我慢して指示だけ出すようにしていると、だんだんと生徒が自分で考えて動くようになってきます。
  大きな打楽器等のセッティングが間に合わない時でも周りの生徒にも手伝わせて先生はできるだけ動かないようにしましょう。
 バンドが出来た最初の年の学年の初め頃は一つ一つ指示しないと何もできないでしょうが、すぐに生徒達だけできちんとできるようになります。2年目からは上級生の動きを見て新入生も動くようになります。セッティングすることが大切なのではなく、生徒達が自分で考えて自分達だけで何かをするようになることが大切なのです。
 準備も練習も同じです。自分で考えて行動する生徒を育てることができればバンドの練習も自分で考えるようになり、それが演奏にもはっきりと現れてきます。

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